提言

社会保険料の削減を目的とした
OTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化に対する提言

社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化における、小児在宅医療分野での懸念点と日本小児在宅医学会の見解

 政府では、社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化が検討されている。日本小児在宅医学会として取り組んでいる小児在宅医療分野においては、以下のような懸念点があり、社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化には慎重に取り組むべきであると考える。

医療的ケア児・者は、筋力低下から排痰が困難であることから感冒薬、消化管機能が弱いことから消化管作動薬をはじめとするOTC類似薬を、生命維持のため、恒常的に複数種類を用いていることが多く、これらが保険適用外となることは「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の基本理念から適切でない。

医療的ケア児・者に対して、診療を行わずに薬を服薬させることの危険、責任の所在が不明である。

感染症法施行規則の改正により、2025年4月7日から急性呼吸器感染症が感染症法上の5類感染症に追加され、指定医療機関による定点把握が始まるが、OTC類似薬の保険適応除外やOTC医薬品化により、急性呼吸器疾患が医療機関で把握できなくなることとの整合性はいかにするのか。

米国食品医薬品局では5歳以下のOTC薬は禁止されており、特に2歳未満では重篤な副作用が報告されている。

このため、乳幼児に対するOTC類似薬の保険適用外は適切ではない。

ほとんどの自治体では乳幼児医療費が公費助成されており、小中高校生まで公費助成を拡大している自治体も少なくない。このため、小児ではOTC薬の使用頻度は低い。OTC類似薬が保険適用外となると、子育て世代の家庭の経済的損失は大きい。

2025年5月
                      一般財団法人 日本小児在宅医学会 
代表理事 前田浩利

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